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ステアケースのビデオを見ながら

GUU子はウチでトライアルのビデオを良く見ます。
お気に入りは、小川選手のガッチスクールビデオと、黒山選手のテクニックバイブルシリーズです。

しかしよくもまぁ、飽きもせずに同じビデオを何度も何度も見ることができるもんだと、その研究心の旺盛さには私もホトホト感心しています。
まぁイメージトレーニングは悪いことでは無いから、頑張って観察して少しでも何か身につけてくれれば良いと思っています。

ところで、これらのビデオの中で私が個人的に印象に残っているシーンがあります。
黒山選手のトライアルテクニックバイブル第3巻のステア編で、時間でいえば22分頃からでてくる、「超高い壁」編の部分です。
場面としては住宅地の道路脇にある、角度が75~80度前後で高さ2メートル強の石垣を、道路を横切りながら登るというモノです。(良い子はマネしちゃダメ)
助走路はアスファルト、ステアは石垣ですから、どちらのグリップも恐ろしく良いと思われます。

私がこのシーンで印象的に思ったのは、その助走スピードの遅さと、前輪を当てる位置の低さでした。
前輪を当てる位置はともかく、あの高さを登るのに助走スピードが遅いハズは無いし、実際に速く見えるじゃないか!とおっしゃる方は、是非試しに「音を消して」、身構えずにボケェ~っとこのシーンを見て欲しいのです。
ステアの高さに比べて、助走スピードはかなりユックリ進入してくるのが解ってくると思います。

ユックリと助走してきたマシンが、石垣のステアに触れる直前まで近づいてから一気にクラッチをつないで加速し、ステアの壁面を「走り」上がります。
次に音が聞こえるようにすると、エンジン音については加速する結構手前から、かなり高回転になっているのも解るハズです。
つまり、走り上がるのに必要なパワーはあらかじめ準備しておくけれど、それは登る直前までクラッチで逃がしていて、そのパワーは決して助走スピードにはそれほど使っていないという事です。

非常に高くて急角度のステアに対しては、高回転高出力をキープしてユックリ近づき、近くて低い位置からフロントを急激に立ち上げ、上方向に抜き上げながら(壁に突進するようにブチ当ててはダメ!)、マシン全体がハジキ返されないよう上方向にマシンを抜き続けながら、ステアを「走り」上がっていきます。

トライアルマシンはウィリージャンプを使わない限り、水平な助走路からステアに突進すると、ステアに対しては直線的な加速度運動をしています。
そしてステアの壁にぶつかったマシンは、その時の速度と方向に見合った反発を必ず受けます。
チカラは、F=ma (力: F, 質量: m, 加速度: a )で表せました。
つまり、マシンがステアに向かって突っ込む加速度が速ければ速ければ速いほど、また突っ込むマシンの質量が重ければ重いほど、跳ね返されるエネルギーもそれに比例して大きくなる事がわかります。
その有り余ったエネルギーが上方向へと向かえばまだ良いのですが、ステアの角度が助走路に対して45度より浅い時に、ようやくマシンにも上方向への力が生まれる程度です。
しかもその角度が45度よりきつくなればなるほど、助走してきた方向へそのままはじき返されるチカラの方が、上向きのチカラよりも多く発生するワケです。
つまり高くて急なステアでは、助走スピードを上げれば上げるほど、助走方向にはじき返されるチカラの方が強く働いてしまうのは、避けようのない自然の摂理というワケです。
黒山選手がビデオの中で、「壁を走るんです」「壁を走って下さい」と言っていましたが、これはまさにその通りです。
でもマズイ事に、高くて急な壁を走り上がるためには、助走速度が速ければ速いほど難しくなります。
何故ならば、マシンが助走してきた方向にイヤでもそのままハジキ返されるチカラの成分が物理的に大きくなるからです。
ではどうするか?というと、黒山選手のアプローチのようにステアに向かってユックリ進入し、ステア直前で一気に加速、マシンを急激に立ち上げて壁に沿わせるように駆け上がる、という事になります。
自分も昔はそうだったので良く分かるのですが、ステアに慣れてきた中級レベルの方というのは、全般的に助走速度がやたらと速すぎるような気がします。
スピードをつけ過ぎたあげく、ステアの壁面でサオダチしたマシンごと、パカーン!パカーン!と真っ直ぐに跳ね返されている事が多いようです。
エンジンを回してパワーを蓄えるのは絶対に必要ですが、マシンを手前から走らせてしまっては、ピンポン玉が壁から跳ね返るのと同じで、上がれるものも上がれなくなってしまします。
以前の私のように、身に覚えのある方はその辺りについて是非一度お考え下さい。

そういえば大昔、私のトライアルのお師匠さんが教えてくれた事の一つに、ステアの形の通りに走れ(ステアの形に合わせてフロントを上げろ)、というのがありました。
まぁオーバーハングの例でも分かるように、全部が全部そうとは言い切れない、と師匠も断っていましたが、でもおおむねこのセオリーは当たっています。
アプローチ(助走路)に対して、障害物の壁面が急角度であるほど、その角度に沿わせるようにフロントを立ち上げた方が、失敗が少ないのは経験上事実です。
急角度でしかも高いステアケースに向かってフロントを上げるのが早すぎた場合、そのフロントの軌跡はステアの変化角度に比べると、大きく緩やかな弧を描きますが、そのような場合は大抵はじき返される事が多いようです。
でも壁面が近づいてから、急激にフロントを上げるのはハッキリ言って恐怖!です。
壁を上がろう!と気負いこみ、助走のスピードをつければつけるほど、ますます恐怖感は倍増します。
失敗するとトンデモナイ刺さり方をしますしね(ハンドルに叩きつけられ息が止まったのは昔何度も経験済み)。
するとどうしても、手前からフロントを上げたくなります。
ならばとばかりに、手前からフロントを上げ、スピードをつけて壁にブチ当たると、今度はマシンごとそのままハジキ返されます。
ステアにギリギリまで近づいてフロントが上げられないのは、やはり助走速度が速すぎる事に原因があります。ステアに登りたい一心から、ついつい助走スピードに頼ろうとしているワケです。これが、ステアに近づいてからフロントを上げられない最大の要因です。
ステアは、助走スピードがないと上がれない、とどこかで思い込んではいませんか?。
ステアのカタチに合わせて低い位置にフロントを当てるためにも、助走速度は速すぎない方が有利です。

さて、もう一つ注意点があります。
低い位置に当てれば良いという事だけで、低い位置に真っ直ぐ突進するように突っ込む事もあまりよくありません。
この場合に何が起きるか、といいますと、昔で言う真直角の現象が現れます。
つまりリヤタイヤが空中に浮き上がり、地面や壁面から離れてしまうので、壁を走り続ける事が出来なくなるんです。
黒山ビデオの中には、フロントを突き刺してリヤを浮かしてステアを上がるテクニックの紹介もありましたが、このワザは壁面のグリップが稼げないので、壁が高くなればなるほど不利になります。
ただしオーバーハングなどではこの現象を逆手にとり、エグレた部分を回避できるメリットがありますが、こと高い壁面を長く走り続けるような場面ではどうしても不利といえます。

ところで、このビデオに限らずトライアルのステアのレクチャーでは「フロントを当てる」という表現が結構普通に使われています。
でも私は正直に言うと、この「フロントを当てる」という表現がそれほど好きではありません。
真直角のように、あるいはウーポンのように走る場合はまさに当てるというか、フロントを刺し込むように当てにいきますが、それですらドカ~ン!とかバシ~ンッ!といったイメージではありません。
急激に、しかしそれでいて丁寧に、叩くというよりは一気に押し込む!といったら良いでしょうか。
滑らかに、しかし急激に立ち上がる曲線を描くイメージでしょうか。
いきなり0⇒100ではなく、その間には全ての数が揃っていて、ただ密集しているだけ、といった感じです。
うぅ~ん、かえって解り難かったでしょうか?。
要はステアに単純に「ブチ当てる」、ではなく「かする」「触れる」「押す」「押し込む」「押さえ込む」「固める」などのチカラの変化を、滑らかで急激にコントロールするイメージを持って欲しいと思うんです。
私は、モテギなんかで上手なライダーの爆発的な加速を見ていていつも思うんです。
なんて途切れのない滑らかな加速なんだろう、って。
アレを見てると、私なんかオンとオフだけのデジタルアクセルワークだよなぁ~、って心底ヘコンじゃうんですよねぇ。

さて、ここまできてなんだかハナシが逆行するようですが、大会や試合ではステアに挑戦する時の助走速度は「可能な限り速いほうが良い」と思います。
ただし可能な限りと言うのは、あくまでパカーン!とはじき返されない自信のある限界の速度の事であり、ギリギリまでステア壁面に近づいても、刺さらずにフロントを上げられる自信のある限界の速度で、という事です。
試合は練習ではありませんし、大会の成績は同じテクニックレベルなら後は走破力がモノをいいます。
走破力においてスピード、勢いは最大の武器です(ただしこの武器は諸刃の剣でもありますが)。
もしスピード不足で落ちたとあっては何もなりません。
ステアは思い切って挑戦しましょう(可能な限りのスピードで)。
ただし、前の注意点だけはお忘れなく。
熱いハートとクールな頭脳をくれぐれもお忘れなく。
デハデハ~。

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